連載企画「太陽熱を活かす三原則」

 

 「蓄熱」-4   

 

「快適な温熱空間づくりを」

蓄熱量の大きい建物は石や煉瓦によって建てられた物です。日本に於いては、
ご存じのように土蔵壁作りが蓄熱量の大きな建物になります。
東京の近くでは川越市に30軒ほど残っているようです。
これらはヨーロッパの石造りの建物に引けを取らない重厚さを持っている、
我が国が誇るべき建物です。

 川越

歴史的な土蔵壁作りの建物は、勿論、蓄熱量が多いからと言う理由で
建てられたのではありません。
飽くまでも防火対策が第一に考えられました。
それが屋内の温度変動の少ない環境を結果的に作ることになりました。
川越に於ける一般的な土蔵壁の厚さは30cmぐらい有ります。
これはコンクリートの蓄熱量でいうと17cmぐらいに相当します。

一方、断熱性能はコンクリートに比べて土は3倍ぐらい良いので、
グラスウール24kに換算しますと20mmぐらいに相当することに成ります。
言ってみれば、170mmのコンクリートに15mmのウレタンボードを
外断熱した感じとほぼ言えると思います。
これであれば現代に於いてもまあまあ悪くはない温熱特性の建物であると言えます。

ここで、1986年の夏に木村健一先生が実測された川越の町屋
について検討してみたいと思います。
7月から9月に於ける最高室温は33.8度、最低室温は24.4度、
測定期間中の平均室温は26.5度でした。
また、土蔵壁作りの町屋は室温に比べ平均放射温度が1~1.5度低いという結果を得られており、
これはまさに、土蔵作りの壁と屋根の蓄熱量の大きさを表していると思われます。
次に、土蔵壁作りの町屋は早稲田のゼミ室の室温より1度ぐらい低く、
土蔵壁作りの町屋の天上面温度、床面温度、内壁面温度が外気温度に比べて
2.5~3.5度ぐらい低くなっていた。
また、早稲田のゼミ室では室温に比べて壁面温度は0.5度程度低いだけでしたが、
町屋は2度程度低い温度を示しています。

これらの結果は、いずれも土蔵壁作り特有な蓄熱量の多さを示していると思われます。
また、早稲田ゼミ室では天上下に於ける放射熱量が目立って多く、
大きな窓を通して地表などからの二次輻射熱の影響を受けていることがうかがわれました。
それに比べ、土蔵壁作りの町屋は窓が小さいこともあり、
直射日光は勿論、二次輻射熱の影響も少なく、
大きな蓄熱量の壁や天上に熱が溜まり込まない構造になっています。
この様に「蓄熱」は快適な温熱空間を作るのに欠かせない物です。

何度も書きますが、熱を溜め込む「蓄熱」という機能はこれからの住まいの必須条件です。
昼しか得られない太陽熱を有効に使い込む為の一つとして「蓄熱」は最も重要だからです。
化石燃料はCO2を排出すると同時に枯渇に近づきつつあります。
未来を完全に予測する能力を持ち合わせていない人類に、原発を操る資格はありません。
その上、ウランだろうがプルトニュームだろうが、
早晩、枯渇するエネルギーであることには変わり有りません。
そうであるなら、先ずは太陽熱エネルギーを
少しでも物にすることを考えなければ成らないと思います。

そのためには、太陽熱を昼間の内に
「蓄熱」するということが最も大切なことになります。





(次回をお楽しみに)