連載企画「太陽熱を活かす三原則」
近年、特に戦後に於いて、屋内温熱環境を作り出すのに
「設備」に全てを任せるという風潮になりました。
その為、本来自然が持っている優れた性質に目を向けることが忘れられてしまい、
それを利用するという考え方がほとんど消滅してしまいました。
そして今に至っています。
これらの社会風潮はこの国の経済が、エネルギーを幾らでも
供給してくれるように見せているからだと思います。
さて私達にとって最も身近で、最も熱が多く溜め込まれている物は何だと思いますか?
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それは、大地である地球です。
地球の平均気温は約15℃と言われていますが、
日本に於いての地中温度は、10メートルほどの所が最もコンスタントに15℃前後のようです。
私達はこの様に膨大な蓄熱層の上で生活していることになります。
勿論、私達が生活している大地の表面は、
地中と違って日中の太陽熱や季節の気候変動により変化しています。
しかし、夏に於いて直射日光が当たらない日陰では余り温度変化起きません。
最も良い例は、トンネルの中です。
夏はとても涼しく感じます。
直射日光の影響を受けない地下深い所から湧いている井戸水は、
15℃の影響を受けて夏はとても冷たく感じますし、冬は反対に暖かく感じます。
これも四季の変動を受けない大地の大きな蓄熱層のお陰です。
この大きな熱容量を持った大地の蓄熱層は昔から色々な所で使われています。
現在、都会では全く経験できませんが、夏の農家の土間がそれです。
直射日光の入らない空間の冷輻射面として快適さの大きな要素になっています。
直射を特別取り入れない構造になっている竪穴住居なども、
夏の涼しさと、
冬の快適さの一部として長年の経験からそういう形になっていったのだと思います。
外国には大地に大きな穴を掘り、その横っ腹に穴を空けて住居にしている例もあります。
動物や虫たちの冬眠も、冷たい風を避けるという理由もあるでしょうが、
温度変化の少しでも少ない地中を選んだのではないでしょうか。
などなど、地中の蓄熱を利用というのは、
生きて行く上で至って大切なことなのだと思いますが、ほとんど顧みられていません。
その理由の一つに、蓄熱層の最大の特徴である、
温まり難く、冷め難いという事が有るからだと思います。
勿論これでなければ蓄熱材でないのですが、
エネルギーを幾らでも投入することが出来る事が社会の方向である為、
蓄熱性能が返って邪魔になったのだと思います。
詰まり、温め難い為の時間を待つのではなく、
温めたい時に直ぐ温められる方が優れた性能であると評価される様になったのです。
その上、集積回路などにより制御技術というもののコストが下がり、
尚且つ
精度が良くなった為、生活には全く必要のない微細な制御が要求されるように成ったのです。
そうすると、どういう事に成るかというと、蓄熱性能である温め難く、
冷め難い性能は制御性能を上げる為に邪魔に成るのです。
その為、スイッチを入れると直ぐ暖まる物が優れているという、
人の快適さとは関係ない次元であらゆる物が考えられるように成ったのだと思います。
それの最も冴えたる物が住宅なのです。
床暖房の欠点として、立ち上がりが遅い、ということが言われるのもその所以です。
今でも、「何分で立ち上がるんですか」という、いまだに、
幾らでもエネルギーが使えるという古い時代の価値観で質問してくる人が多いようです。
大分、断熱性能を気にする人は増えてきましたが、
家の中にどれだけ蓄熱をしようかと考える人はまだほとんど居ません。
それで、いまだに「高気密高断熱」という言葉が後生大事にされています。
本当に良い家を作る為には「高気密高断熱」だけでは全く対応できません。
この言葉は、今までの価値観を引きずったままで、
少しランニングコストを下げようという程度で生み出された言葉です。
勿論快適な住まいを作る為の一つの条件ではありますが、
これではこれからの時代に全く通用しません。
これから目指すのは
「高断熱・高遮熱・高蓄熱・高集熱・高通風・高放熱」にしなければなりません。
設備を前提にした今までの家はもう作ってはいけないと思います。
間近に迫っている太陽熱を使う時代であれば、「蓄熱」は絶対条件です。
蓄熱が考えられていない家でソーラーハウスは有りません。
(次回をお楽しみに)