【図-1低気密・低断熱・低蓄熱】よりは断熱が良いだけましですが、【図-2高気密・高断熱・低蓄熱】の場合
は室温が上がり過ぎてしまい、実際はせっかく集熱した熱を窓を開けて捨てなければならなくなってしまう場
合があります。もったいない話です。
【図-3高気密・高断熱に高熱容量】は上の2者に比べて理想的なグラフの形をしています。朝方、室温も下が
っていませんし、室温も高くなりません。集熱した分を蓄熱層に貯めてしまうから室温が上がらないんです。
蓄熱層に貯め込まれた熱が少しずつ室内に放熱されるため、あまり室温が下がらないんです。昼間ただでもら
った太陽エネルギーを貯め込んだお陰なんです。
図は室温を20℃に保った時に必要なエネルギー量も示しています。灰色の部分の面積がエネルギー量です。
高気密・高断熱・高蓄熱にするとエネルギーの使用量が最も少ないことがわかります。
【図-1低気密・低断熱・低蓄熱】の条件は現在において論外ですが、【図-2高気密・高断熱・低蓄熱】の条件
でも条件不足であることが良くわかります。【図-3高気密・高断熱に高熱容量】において、暖房機器に投入す
るエネルギー量をもっと少なくするためには、先ず、集熱量を増やす必要があるわけですけど、同時に取り込
んだ熱を効率よく全て貯め込むことができる蓄熱部のことをきちんと考えておかねばなりません。このグラフ
からは以上のことが読みとれるわけです。
21世紀の住まいに熱容量は不可欠だということがこれでおわかりになるでしょう。それにはまず、出来るだけ
性能の良い断熱をすることが先決です。つまり、高断熱、高気密、高熱容量ということです。これが、これか
らの家を作るときどうしても必要です。「気密」につきましては後に詳しくお話します。
ところで、日本の住まいはやはり「夏を旨とすべし」が原則であると思います。今までみたいに設備を後から
入れて、何とかしようという発想では、『省エネ』とは程遠い話になってしまいます。やはり、これからはま
た「夏を旨とすべし」が非常に大切なのだと思います。
簡単に言ってしまいますと、夏には広く開けられ、冬は高断熱、高気密になるように完璧に閉じられる構造と
いうことです。理想的といわれるかもしれませんが、夢を持たなければ何事も出来ませんから、あえてこの理
想的な構造を提案したいと思います。このような構造は、多分まだ標準工法としてどこでもやられていないの
でしょうけれど、これから新築されるのであれば、設計士さんに注文を出して、チャレンジしても良いと思い
ます。実際、古人の知恵には優れたものがあるわけですから、有能な設計士さんであれば不可能なことではな
いでしょう。
ちょっと古人の知恵をご紹介しましょう。
京都の町屋のように、坪庭を有効に使う解決策もあると思います。それは、温度が低く重たくなった空気を逃
がさないようにして、「ゆらぎのように動く空気」を利用する方法と言われるものです。温度の低い空気は重
く下に沈むわけですから、坪庭で温度の少し低い土と接触させて空気の温度を、いつも下げておいてやる事だ
と思います。打ち水をすることによる気化熱が、さらに、土の温度を下げているのだと思います。その温度が
少し下がった空気が外の風などで揺らされて、室内の空気の動きを作るわけです。コップの中に水を入れて揺
らしてみる感じです。その時水は水平方向に行ったり来たりするわけです。
さて、夏のもう一つの重要なポイントは屋根です。屋根の断熱はとても重要で、できれば茅葺き屋根並の断熱
特性があればよいですね。屋根は雨、風が防げればよいわけではありません。夏季において、直射日光(熱)を
室内に入れないようにするための機能が無くてはなりません。その時の絶対必要条件は、適切な長さの庇(ひ
さし)の出た屋根です。勿論庇の代わりに直射日光(熱)を入れない仕組みがあれば基本的にはよいのですが、
できるだけ熱を遮断するためには遮光(熱)部が居住部分からより離れた所にあった方が効果的です。ただし、
太陽が低い位置の場合は、庇では防げませんから、庇以外の遮光(熱)の仕組みが必要です。
また、本当は屋根材が吸い込んだ湿気を気化させることにより温度を下げる機能があれば、屋根材としてもっ
とすばらしいのですが。残念ながら工業製品でそんな機能を持った物は無いと思います。そういう点では、茅
葺きの方がよっぽど優れているわけです。
(注:実際に室内に入り込む熱は太陽からの直射熱だけではなく、熱せられた隣家の屋根からもかなり入って
きます。特に都市部では顕著です。)
夏の対策の基本は、何しろ直射光(熱)を室内に絶対に入れないことです。熱容量を大きく持たせた場合は特に
注意しなければなりません。
そのためには遮光(熱)を「内」ではなく、「外」でする必要があります。ブラインドなどで遮光(熱)したつも
りでも、室内側に吊るしてある場合は、ブラインドが温まってブラインドそのものが室内に対しての熱源にな
ってしまい、ブラインドの効果は半減してしまいます。遮光(熱)は必ず外側でしなければなりません。そうす
れば、遮光(熱)材の温度が上がってしまっても、風が熱を持っていってくれます。そんな意味では、秋から冬
に落葉する植物は最も優れた遮光(熱)材です。
遮光(熱)するということは、光を入れないことですから、当然室内が暗くなります。夏の快適さを求めた結果、
暗くなるわけで、意味のある暗さです。現在の住宅では、むやみやたらと明るくする傾向があるような気がし
ます。外から見た形が格好いいからですかね。その結果、熱が入りやすく、熱が逃げやすい家になってしまい、
そのように設計したどうしようもない室内環境を、エアコンだとか冷暖房だとかを使って、それにエネルギー
をガンガン投入して、何とかしようというのが現状ではないでしょうか。もっとも、家を建てる人がとにかく
明るくしたいと望んでいる場合がありますからやっかいです。明るくするということは、太陽からの可視光線
部分、いわゆる、光ですね、そのエネルギーはただで取り入れて利用しているわけですけど、しかし、夏は同
時に熱エネルギー分の赤外線も入ってきてしまうことになるわけです。そのために先ほどもお話しいたしまし
たブラインドのことになるわけですけど、まあ、「インテリア的に見ると」ということなのでしょうが、省エ
ネ的に見れば、室内に入れてしまった物を、設備とエネルギーを使って排除するというのは全くナンセンスな
ことです。太陽を光源としか捉えていないんですね。随分尊大な態度だと思います。こういう考え方であれば、
ちょっと省エネとは縁がないですね。
熱を「入れないようにする」「外でカットする」が夏場の原則です。太陽からの熱は反射したり、二次輻射し
たり、あらゆる方向から入ってきます。一つ一つ立地条件に合わせて検討し、確実に遮断し、二次輻射熱源に
ならないように、注意深く防熱対策を立てねばなりません。

13.断熱と熱容量および夏場の対策
まず、右の3つのグラフの説明をします。
図-1のグラフは低気密・低断熱・低蓄熱の非常に熱の逃げやす
い建物の熱環境特性を示しています。
図-2は高気密・高断熱・低蓄熱の場合で現在の高気密・高断熱
といわれる熱の逃げにくい建物の特性です。
図-3は高気密・高断熱に蓄熱容量を大きくした場合を示してい
ます。
3例とも当然外部条件は同じですから、集熱量、つまり部屋に
差し込む日射の量と外気温は当然同じですが、室温が様々に変
化しているのがわかります。
室温の変動を見ますと、低気密・低断熱・低蓄熱のものが日の
出直前に最も外気温に近く低くなっています。断熱材が少ない
ため冷えてしまうわけです。日中に室温はそこそこ上がるので
すが、集熱しなくなると室温がどんどん下がってしまいます。
気密・断熱が悪いために、せっかく部屋に入った日射もすぐ逃
げてしまうためです。
図-2の高気密・高断熱・低蓄熱の場合は、気密・断熱が良いた
め集熱した熱により室温がどんどん上がってしまったことがわ
かります。断熱は良いのですが、昼間集熱した熱を貯め込んで
おけないために、朝方の室温は下がってしまいます。
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